『全面改訂 第三版 ほったらかし投資術』を読んで

年金,投資

個人的名著のひとつ。山崎元氏と水瀬ケンイチ氏の両名から贈られる忖度なしの投資術。

数時間で読了できるほどの薄さだが中身は非常に濃い。自己啓発本のように同じ内容を無駄に繰り返すようなことは一切なし。勿論、繰り返される箇所はあるものの具体性(何をすべきか、何をすべきではないか)があるため、読み手にとっては著者からの強い意識づけと感じられる。

半ば普通名詞のように広まった「ほったらかし投資術」の元となった書き手として、公式本として改訂を進めたとのこと。以前読んだ「全面改訂 ほったらかし投資術」では、山崎氏はこう考える、水瀬氏はこう考える、と二人の意見が併記されていた箇所があったが、今回の改訂ではひとつの意見に統一されているため、読んでいて迷う箇所がなく、これさえやっておけば大丈夫という安心感が増した。投資家として理解しておくべき最低限のポイントも解説しているため非常に読みやすい。

投資はほったらかしても、投資に対する自分の立ち位置が決してブレないよう、この本を折に触れてパラパラとページをめくることを習慣化したい。

3行で要約

ほったらかし投資術とは、プロが考える最善の運用に大きく劣らず、なるべく簡単に実行できる、個人にとっての資産運用の具体的方法である。

資産形成に掛ける手間とコストを節約して、「人生を良くすること」に時間とエネルギーを使って欲しい。

長期・分散・低コストで投資を始める、そして止めないことが大事。

行動に移そうと思った3つのこと

資産全体で運用商品を考えてアセットアロケーションを見直す。

新NISAの積立計画を立てる。

週に一回はこの本をパラパラめくる。

次に読んでみたいと思った本

ユダヤ人大富豪の教え

経済評論家の父から息子への手紙

山崎元の最終講義

振り返り

第1章 ほったらかし投資と人生のお金

そして、それは個人の能力に関わらず、極めて再現性が高いのです。

山崎元, 水瀬ケンイチ. 全面改訂 第3版 ほったらかし投資術. 朝日新書, 2022年, p.40

これこそがほったらかし投資術の真髄であると思う。

第2章 ほったらかし投資の簡単!「実行マニュアル」

投資とは「買ったり・売ったり」することではなく、「持っていること」です。

山崎元, 水瀬ケンイチ. 全面改訂 第3版 ほったらかし投資術. 朝日新書, 2022年, p.62

売ったり・買ったりして、その差額で利益を出す行為は投資ではなく投機である。

わざわざ売却して、全世界株式のインデックス・ファンドに乗り換える必要はありません。

山崎元, 水瀬ケンイチ. 全面改訂 第3版 ほったらかし投資術. 朝日新書, 2022年, p.64

改訂内容に合わせて投資ファンドを乗り換える必要はない。

「年金として」確定拠出年金の中だけで運用を考えるのではなく、自分の運用全体の中の一部として、どの運用部分を割り当てるかと考えると、運用商品選択の答えを出すことができます。

山崎元, 水瀬ケンイチ. 全面改訂 第3版 ほったらかし投資術. 朝日新書, 2022年, p.69

用途から投資対象を考えることは間違い。

「ほったらかし投資術」を理解し実践する読者の場合、確定拠出年金での運用商品の選択肢は、「全世界株(日本含む)」、「全世界株(日本除く)」、「先進国株(日本除く)」のいずれかに該当するインデックス・ファンドが、ほぼ唯一の正解になります。

山崎元, 水瀬ケンイチ. 全面改訂 第3版 ほったらかし投資術. 朝日新書, 2022年, p.69

これは山崎元氏のYouTubeや水瀬ケンイチ氏のブログでも解説されていること。あとは資産全体でリスク資産に割り当てられる金額を自分で判断するだけで良い。

第3章 実際に始めてみよう!

もっとも、「微差」と「大差」を適切に判断することは重要です。加減は大切なのです。

山崎元, 水瀬ケンイチ. 全面改訂 第3版 ほったらかし投資術. 朝日新書, 2022年, p.92

目の前にある事実を「微差」として容認することは良い。但し将来起こりうるだろうことを(特に他人から勧められたもの)、悪くても「微差」だろうと考えることは「大差」となり損をすることにつながる。

第4章 インデックス運用の基礎知識

先ず、インデックス運用の定義については、これまでも説明したように「株価指数(インデックス)に連動することを目指す運用」だと考えていいでしょう。

山崎元, 水瀬ケンイチ. 全面改訂 第3版 ほったらかし投資術. 朝日新書, 2022年, p.116

パッシブ運用の定義は、「ベンチマークとの連動を目指す運用」です。

山崎元, 水瀬ケンイチ. 全面改訂 第3版 ほったらかし投資術. 朝日新書, 2022年, p.117

ベンチマークとはファンドの運用成績を評価するときに使用する比較対象のこと。つまりベンチマークとインデックスが同じ場合のパッシブ運用をインデックス運用と呼ぶと理解した。

パッシブ運用の反対はアクティブ運用。

第5章 「ほったらかし投資」実践の勘所

親御さんが所有している資産をチェックすると、毎月分配型の投資信託や、ファンドラップ、外貨建ての生命保険など、手数料が高く、持たない方がいい資産を持っている場合があります。これら三つの商品は、かつて金融庁が「金融レポート」(平成27事務年度版)で、問題があるとして取り上げたものです。

山崎元, 水瀬ケンイチ. 全面改訂 第3版 ほったらかし投資術. 朝日新書, 2022年, p.147

何が問題なのかを自分なりに整理しておく。

毎月分配型の投資信託では、複利の効果を活かしていない点がダメ。ファンドラップでは、インデックス・ファンド以上の成績を期待できないにも関わらず高額の報酬を払わなければいけない点がダメ。外貨建ての生命保険は為替の変動リスクを負っているにも関わらず、その分のリターンが含まれていない点がダメ。

そもそも、著者達は、投資にあって「信じる」という心の持ち方には賛成しませんが(おそらくは「賭ける」くらいが適切でしょう)、投資する際に敢えて「信じる」に足る原則があるとすると、企業の利益や経済の成長ではなく、「市場の価格形成の適切性」でしょう。

山崎元, 水瀬ケンイチ. 全面改訂 第3版 ほったらかし投資術. 朝日新書, 2022年, p.152

いくらか厳しいことを言いますが、いわゆる投資教育にあっては、割引現在価値とリスク・プレミアムについて理解させることは、株式投資について投資家本人が判断できるためには必須の条件です。

山崎元, 水瀬ケンイチ. 全面改訂 第3版 ほったらかし投資術. 朝日新書, 2022年, p.153

リスク・プレミアムとは、リスクの高い資産への投資に期待できるリターンと、無リスク資産への投資に期待できるリターンとの差のこと。つまり企業の利益や経済の成長を予測する必要はなく、この2つのリターンの差がリスク・プレミアムであるため、たとえマイナス成長であってもリターンは期待できる。

第6章 よくある質問にお答えします

ざっくり言うと、為替のリスクがあるのに、高いリターンが期待できないから外国債権への投資はしなくていい、ということです。

山崎元, 水瀬ケンイチ. 全面改訂 第3版 ほったらかし投資術. 朝日新書, 2022年, p.173

為替のリスクを負担しているは投資家なのに、そのリスクに対するリターンが期待できないのでは投資する意味がないということ。その割に手数料が高いから得するのは金融機関のみ。

特別鼎談 バンガード撤退後のインデックス・ファンドの未来

ただ、金融庁に言われるまでもなく、長期投資に不向きな商品は、短期投資にも不向きなのです。

山崎元, 水瀬ケンイチ. 全面改訂 第3版 ほったらかし投資術. 朝日新書, 2022年, p.201

資産運用の目的は効率よくお金を増やすこと。且つ適切なリスクで行うこと。

新NISAでは1階も2階も全世界株を一本持ったらそれでおしまい。

山崎元, 水瀬ケンイチ. 全面改訂 第3版 ほったらかし投資術. 朝日新書, 2022年, p.201

長期の資産形成を普及させたい金融庁の新NISAにかける思惑は積立投資。つみたて投資枠や成長投資枠の言葉に惑わされず、1階も2階も同じ商品で運用することにした。

成長枠の対象投信は玉石混交の石だらけという事実。金融庁の想いを無視して成長投資枠だからリスクの高い商品で運用というイメージを投資家に植え付けようとしているのが透けて見える。

読書メモ年金,投資

Posted by 千比呂