『人生100年時代の年金戦略』を読んで

2024年1月14日年金

個人的名著のひとつ。年金の現在と今後が具体的な数値を伴って説明されていて腹落ちしやすい。

年金戦略を考える上で、①年金は保険であること、②60歳以降も厚生年金に加入して働くこと、③確定拠出型年金の節税効果を活かした運用をすること、の重要性を理解することができる。

発刊以降に制度変更があり読み替えが必要な箇所はあるものの、著者が伝えたい年金戦略の本質は不変であり、今でも大いに役立つ。

3行で要約

年金は金融商品ではなく、事故(老齢/障害/死亡)に備えた終身の保険商品である。

60歳以降も厚生年金に加入して働き続けることで、受給する老齢厚生年金を増やすことを勧める。

確定拠出型年金は節税口座であり、節税効果を活かした運用をすべき。

行動に移そうと思った3つのこと

節税シミュレーションをする。

定年後の過ごし方として、厚生年金を増やす働き方があることを一案として取り入れる。

アセットアロケーションを見直す。

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振り返り

序章「年金をいくらもらえるか」は自分の選択次第

確かに仕送り方式のもとでは、少子高齢化により受給世代がどんどん増え、現役世代がどんどん減り続けると、いずれは制度が破綻するように思えます。しかしそんなことはおきません。

受給世代は永遠に増え続けるわけではなく、2040年前後にピークに達した後は減少に転じます。人数の多い団塊世代が亡くなっていくからです。その結果2060年ごろからは受給世代に対する現役世代の比率は、低下した水準のままあまり変わらなくなります。

田村正之. 人生100年時代の年金戦略. 日本経済新聞出版社, 2018年, p.103

今後の現役世代の負担が増え続け、給料のほとんどが保険料になってしまうのではと危惧していたが、比率のバランスが取れるまでの間は税金の投入を増やすなどして対応していくのだろう。

しかし様々な予測は完全ではなく対策も政治的な理由で遅れがちになるので、5年ごとに”年金版人間ドック”ともいえる財政検証を行って、問題があれば修正していく方式になっています。

田村正之. 人生100年時代の年金戦略. 日本経済新聞出版社, 2018年, p.17

マクロ経済スライドは効果的だが、デフレに弱いという一面もあり。

第1章 年金は人生のリスクに備えるお得な総合保険

世の中では年金のことをあたかも金融商品のように取り扱い、払った金額に対して損か得か、という切り口で見る傾向があります。

田村正之. 人生100年時代の年金戦略. 日本経済新聞出版社, 2018年, p.27-28

このような切り口で考えることは大切だが、年金の本質は保険であり、損をするから払わないといった選択肢はありえない。知らなかったことで不利益を被らないようしっかりと制度を理解して、積極的に活用していくことが何よりも重要。

第2章 公的年金、フル活用のための実践術

何歳繰り下げようが、額面ベースでは需給開始後から11年11カ月でお得と考えておきましょう。

田村正之. 人生100年時代の年金戦略. 日本経済新聞出版社, 2018年, p.100

簡単な計算で自分で算出できるものの、指標を提示してくれているのはありがたい。ただし「額面ベース」というのが重要なポイント。本書でも後続の章で記載されているが、税金で引かれる額があるため、実際はもっと長くなることに注意。

金融商品を考えるときに大事なのは「コンセプトの正しさ」と、実際の商品になったときのお得度は別ものということです。

田村正之. 人生100年時代の年金戦略. 日本経済新聞出版社, 2018年, p.103

話題のトンチン年金は、手数料が割高でないか、支払う保険料と公的年金の繰下げ効果との比較、インフレリスクにはどう対処するか、を自分でしっかりと調べておきたい。

「繰り下げ中に亡くなってしまったら丸損だ」と思う人もいそうです。しかし、そうではありません。仮に年200万円の年金をもらえる人が68歳0カ月まで繰り下げてそこで亡くなれば、200万円×3年分の600万円が遺族に未支給年金として支給されます。

ただし、いったん68歳で25.2%増額した年金を受給開始した直後に亡くなれば、その前のもらえなかった3年分は消えてしまいます。

田村正之. 人生100年時代の年金戦略. 日本経済新聞出版社, 2018年, p.106

遺族年金に限らず年金はしっかりと調べておきたい。選択した結果であれば受け入れることができルガ、知らないうちにその結果になっていたのならば受け入れ難いだろうから。

物事の判断の際、大きな方向性に逆らって目先有利そうなテクニックに走ると、結果的に失敗になることは、様々な場面で起こりがちです。

田村正之. 人生100年時代の年金戦略. 日本経済新聞出版社, 2018年, p.126

とても大切な指摘。仮に目指すゴールに合致していたとしても、出発点に則した道を通らないとゴールの高さが異なってくると理解。目的があって状況を把握、目的の結果を出すための手段を考えて行動をしたとしても、則した道を通らないと結果に高低の差が出るということ。肝に銘じておきたい。

第3章 運用で堅実に増やす – 個人型・企業型DC徹底活用

最近、イデコの様々な節税効果が注目されていますが、別段企業型が不利なわけではありません。

田村正之. 人生100年時代の年金戦略. 日本経済新聞出版社, 2018年, p.202

掛金や口座管理費用の拠出を会社が負担している分、企業型の方が有利といえる。問題は運用商品の選定を会社がしているため、自分で好きな商品を選べないこと。イデコであれば好きな商品を扱っている金融機関を選べば良い。

地雷商品しかない場合は、運用利益に対する節税効果を犠牲にして元本保証型の商品で凌ぐしかないと考える。所得税の節税効果を考えると拠出額を減らすことはできるだけ避けたい。

年収と課税所得の関係を、より正確に知りたい場合に簡単なのは、金融機関のサイトを使う方法です。お勧めサイトのひとつが、中央労働金庫(ろうきん)です。

田村正之. 人生100年時代の年金戦略. 日本経済新聞出版社, 2018年, p.221

年収だけを入力させるような節税シミュレータではミスリードにつながることに注意が必要。家族構成によって控除も課税所得も税率も変わるので気をつけたい。

「自分の場合、一時的な評価損がこれくらい出ても耐えられる」というような資産配分を最初から作っておき、下落局面でも淡々と定時定額での投資を続けることがとても大切です。

田村正之. 人生100年時代の年金戦略. 日本経済新聞出版社, 2018年, p.259

リスク資産と無リスク資産は割合ではなく額で決めるべき、という山崎元氏の意見にもつながる考え方。問題はその額を感覚で決めるのか何らかの判断材料をもとに決めるのか。最終的には感覚になると思うが、手元にある生活防衛資金、総資産に対する評価損の割合、資産形成への影響度合い等が判断材料となり得るか。

読書メモ年金

Posted by 千比呂