『世界最高峰の研究者たちが予測する未来』を読んで
読書メモです。皆様の参考になればと思い公開していますが、あくまでも個人的な感想であり私の解釈を皆様に押し付けるものではありません。
3行で要約
テクノロジーを学ぶことで、ビジネスの変化の本質を知って欲しい。
最新テクノロジーによって、特に大きな変化が生じる6つの業界があり、未来を予測してみる。
最新のテクノロジーから生まれたサービスを利用することで、意識変革を起こして欲しい。
行動に移そうと思った3つのこと
紙を媒介にしているサービスを振り返り、どんなビジネスができるのかと考えてみる。
人間の感情を最適化するとはどのようなことか、またどのようなデータが必要かを考える。
教育業界を対象にAIをどう活用できるのか、どんなビジネスができるのかと考えてみる。
この本をきっかけに読みたいと思った本
2025年を制覇する破壊的企業
振り返り
はじめに
小中高といった区分や大学受験資格が改編され、海外への進学や海外からの進学がしやすくなりました。小学校入学と同時に自分が学びたい、興味ある領域やテーマを存分に学べるようになったのです。すべての分野を網羅的に学ぶのが主流だった教育から変化し、もし得意な科目が見つかれば、他の時間をその科目に充てることで、海外のギフテッド(才能がある人向け)教育と同等に強みを伸ばせる環境に進化しました。
山本康正. 世界最高峰の研究者たちが予測する未来. SB新書, 2023, p.8
海外で学ぶときには、母国語でシームレスなコミュニケーションができることが理想だが、これも含めて環境の進化に期待したい。
先生はその学校の教師に限りません。ユニクロの柳井正氏が寄付をしたことによって実現した、スタンフォード大学が提供するe-Japanプログラムのように、世界中に点在する各領域の専門家に教わることができるシステムが構築されたからです。しかも、教師と生徒のデータを解析することで、自分と相性のよい先生をマッチングしてくれます。
山本康正. 世界最高峰の研究者たちが予測する未来. SB新書, 2023, p.8
実現したいアイデアのひとつだが、AIは設定した収益(目的)を最適化することに長けており、あらゆる手段でその目標を達成しようとするが、相性の良さ(満足感や多幸感という感情)をどうやってデータにして、どうやって解析させれば良いのだろうか。
満足感や多幸感を最適にするとはどういうことなのか?それを実現するためにはどんなデータが必要なのか?そもそも今あるマッチングアプリとは何が違う?
第1章 エンターテイメント業界
大手広告代理店でありがちな、新入社員の育成などで「100本、キャッチコピーを考えてこい」と言われ、ゼロから100のキャッチコピーを生み出すようなことは、少なくなるでしょう。
AIにキャッチコピーを書かせ、その中から現在のマーケットにフィットするのはどれか。より良いコピーは?そのような育成方針にシフトしてくからです。
山本康正. 世界最高峰の研究者たちが予測する未来. SB新書, 2023, p.81
AIに条件を与えてネタを出させて、人間が感情・感覚でネタを評価する。あるべきAIの利用方法のように思われるが、AIが出したネタをそのまま利用するのは危険。ネタをそのまま出すのではなく、新たに何かを生み出すことが重要と考える。そうしないと、AI写真集のようにどこかで見たような新鮮味のない創作物で溢れることになり、ユーザーへの訴求力が低下することに繋がる。
第2章 金融業界
現状の日本においては、コンビニでスマホを利用して住民票を発行できることが、画期的であるかのように取り上げられています。しかし、それはあくまで住民票が必要な状況そのものを、デジタルで完結させるための中間地点であるべきです。
紙に印刷するのではなく、スマホ認証でいいのです。なぜ、わざわざプリントアウトせざるを得ないのか。その状況を規定も含めた上で変えていかなければなりません。
山本康正. 世界最高峰の研究者たちが予測する未来. SB新書, 2023, p.94
紙を媒介しているサービスには、ビジネスチャンスがあると考えることができる。
金融機関の人に向けて、これからはスマホで完結するようなサービスを考えることが必要だと先述しましたが、仮にそのようなアイデアが生み出されたとしても、実装されるのはあくまでもスマホ内です。
つまりユーザからしてみれば、金融サービスはあくまでスマホアプリの一つに過ぎないのです。
山本康正. 世界最高峰の研究者たちが予測する未来. SB新書, 2023, p.108-109
サービスがアプリに過ぎないのであれば、ビジネスアイデアからビジネスモデルへ落とし込むときに、アプリを前提とした収益構造を前提にできる。また決済スキームを自分で用意する必要がないというメリットがある。
第3章 製造業界
加えて、今でこそだいぶ改善したようですが、ソフトウェアを過度に軽視したハードウェア部門が強いという業界の歴史があります。
山本康正. 世界最高峰の研究者たちが予測する未来. SB新書, 2023, p.142
この認識はなかったので、この本から得ることができた新たな知見のひとつ。
ただ、このような未来、懸念は、私が繰り返し伝えていることでもありますが、自動化を監視するなど、新たなカテゴリーの仕事が創出されると、あわせて論じられているため、そこまで不安視することではない可能性もあります。
山本康正. 世界最高峰の研究者たちが予測する未来. SB新書, 2023, p.143
職を失っていくスピード感と新たなカテゴリーを創出しその必要性が伝播していくスピード感を比べると、前者の方がずっと早く、また職を失う人数と新たなカテゴリーの職につく人数を比べると、前者の方がずっと多いはず。著者の未来予測は楽観的すぎる。
家電はそもそも家事をサポートすることが目的です。そのサポート機能が単にタスクをこなすだけではなく、体験としてより高まっていく。
山本康正. 世界最高峰の研究者たちが予測する未来. SB新書, 2023, p.158
家電による体験という発想は面白い。
しかし、これから先の未来ではもっと進んで、ユーザーのこれまでの体験から、その言葉の裏にある本当のニーズを汲み取ってくれることが重要です。
山本康正. 世界最高峰の研究者たちが予測する未来. SB新書, 2023, p.158
Appleが提供した「SIRIの提案」はこれを目指しているのだろう。
第4章 建築・不動産業界
なぜなら、ユーザはハードウェアを通じて同時に、ソフトウェア的なサービスや体験を求めているからです。
山本康正. 世界最高峰の研究者たちが予測する未来. SB新書, 2023, p.184
ハードウェア(土地や建物)だけではなくソフトウェア(顧客のニーズや体験)が大切。これは建築・不動産業界に限らない。体験を提供することを意識すること。
しかし返答された画像に対し、どのようなアクションを行ったら自分好みの家が出てくるのか?いわゆる生成AIとの壁打ちは、それこそ専門性の高い人が行った方が、現時点では精度が高いからです。
山本康正. 世界最高峰の研究者たちが予測する未来. SB新書, 2023, p.192
壁打ちという表現が秀一。確かに壁打ちは専門性が活かせるポイントのひとつだが、同じ専門性を持っている人との差別化が図れるほどではないと感じる。
専門性の低い人に一定の精度で壁打ちできるスキームを提供できないか。
AIによる画像解析技術を使えば、人がモニターの前にずっと座って監視している必要はありません。異常を検知した場合には、アラートを発すればいいのです。
山本康正. 世界最高峰の研究者たちが予測する未来. SB新書, 2023, p.194
全くもって同意する。だからこそ、p143で述べていたような「自動化を監視するなど、新しいカテゴリーの仕事が創出」という予測は的外れと考える。
第5章 医療業界
ここでも技術やアイデアは素晴らしかったけれど、社会に受け入れられなかった。
山本康正. 世界最高峰の研究者たちが予測する未来. SB新書, 2023, p.220
医療業界では受け入れるためのハードルが他の業界とは大きく異なると思う。患者はサービスが便利かどうかではなく、サービスで安心を得られるかどうかを求めているので、不安を感じる要素があれば、なかなか受け入れられないと思う。
第6章 教育業界
大学を出たあとも、時代は変化し続け、結局こまめに自発的に勉強し続けることが人生に意味・意義を見出せます。そのポイントが、誰が教えるか、誰から学ぶのか、なのです。
山本康正. 世界最高峰の研究者たちが予測する未来. SB新書, 2023, p.234-235
自発的という点が重要。
前置きが長くなりましたが、つまり、これから先の社会やビジネスでは、コミュニケーション能力がこれまで以上に重要だということです。
山本康正. 世界最高峰の研究者たちが予測する未来. SB新書, 2023, p.249
全くもって同意する。但し、AIが当たり前のようにチューニングテストをクリアするようになり、質疑応答から人間なのかAIなのかが判別できない未来が訪れることが予測できるので、自分なりに重要なコミュニケーション能力とは何かの答えを持っておく必要がある。今の私にとっての答えは「共感」する能力である。
ただ現状のマッチングサービスは、授業を受けたい人がレビューや授業の構成、講師のキャリアなどを見ながら、自分で判断して行なっています。これから先の未来では、このマッチングもテクノロジーにより、最適化されていくことでしょう。
ここで説明したマッチング・最適化とは、いわゆる婚活、マッチングアプリのようなイメージです。住んでいる地域や趣味嗜好、学歴、職種、勉強したい時間帯、これまで受講したコンテンツなどを入力してもらうことで、最適な先生やコンテンツを提供することは、テクノロジー的には不可能ではありません。
山本康正. 世界最高峰の研究者たちが予測する未来. SB新書, 2023, p.237-238
現在の婚活、マッチングアプリで既に実現できているのであれば、テクノロジーの進化を待つことなく、授業のマッチングだって最適化できるのではないか?いまいち主張がわからない。
おわりに
しかし、だからこそ自分でどんな未来になるのかを、現在のトレンド、特にテクノロジーの動向を学ぶことで、自分なりの予測、仮説を用意しておく。
山本康正. 世界最高峰の研究者たちが予測する未来. SB新書, 2023, p.260
習慣化することが大事。予測・仮説を検証することはさらに大事。
本当に事情が分かっている人は誰なのか、その人は不必要に意見を表明することもないので、参加しているかどうかを注意深く見る必要があります。
山本康正. 世界最高峰の研究者たちが予測する未来. SB新書, 2023, p.264
本書でも触れられているが、日本の大企業やVCがメタバースの波に乗り積極的な投資を進めている中で、世界的な企業である任天堂がメタバースの波に乗らなかったのは何故なのか?このような視点を持つと本当の事情というのが透けて見えてくるのかもしれない。